週刊ポスト2012年7月13日号は、ぶち抜き14ページ報じられなかった「小沢政局」全内幕として小沢一郎を前面フィーチャリングしている。いつも雑誌を立ち読みして済ましているのだが、今回は品切れしているところが多く、仕方なく近くのコンビニでポストを購入してしまった。
原発で、尻尾をさらけ出すことになった日本の権力支配構造が、「小沢一郎」という別の角度からあぶり出されている。ということで、週刊ポストの巻頭を飾る鳥越俊太郎氏と長谷川幸洋氏の対談箇所をご紹介したい。
対談の中での長谷川氏のコメント「・・・マスコミの異常ともいえる小沢パッシング・・・。一方、それでも政治の中心に居続ける小沢氏のタフさには正直、驚きます。」はかなりの人が同意見だろうとおもう。マスコミのみならず、検察をはじめとするエリート官僚のタックルや周到に仕掛けられた罠を巧みにかわし続ける小沢の所作は、意外とファンが多いのではないだろうか。
「政治の節目節目で必ず大きな役割を演じ続けてきたけど、こんな政治家は過去にはいなかったし、アメリカや諸外国の政界を見渡しても珍しい(鳥越)」、ロッキーのようにタフで、イチローのように俊足、かつ香川のように見せ場を作り続ける、稀代の政治家をこれからも、ライブでウォッチングしていきましょう。
緊急対論「人物破壊」20年の真実を追う
霞が関か、アメリカか、それとも日本のドンなのか
鳥越俊太郎 X 長谷川幸洋
「小沢一郎を消せ」と命じた本当の黒幕は誰か
国際謀略から闇献金、果ては家庭問題まで、徹底した執拗な小沢バッシングは20年に及ぶが、いずれも空振りに終わり、政治家・小沢はまだ生きている。それだけでも稀有な存在だが、なぜ小沢氏だけがこれほどまでに狙われるのか。20年前から「この男を見続ける」と注目し、ウォッチしてきた鳥越俊太郎氏と、一線を画して小沢氏の政治手法に批判的な立場をとる長谷川幸洋氏は、しかし「小沢叩きの異様さと黒幕」で意見が一致した。
鳥越 私が小沢一郎という政治家に注目したの」は20年以上前、たしか官房副長官だった頃で、自分の番組『ザ・スクープ』で直撃取材したことがある。47歳で自民党幹事長になり、私は日本を動かす政治家としての存在感を感じ、番組で、「この男をこれからも見続けていきます」と」宣言しました。その通り、彼は政治の節目節目で必ず大きな役割を演じ続けてきたけど、こんな政治家は過去にはいなかったし、アメリカや諸外国の政界を見渡しても珍しい。
長谷川 私は小沢民に会ったことはないし、鳥越さんほど長く注目してきたわけではありません。私が注目したのは西松建設事件や陸山会事件そのものより、むしろマスコミの異常ともいえる小沢パッシングからでした。一方、それでも政治の中心に居続ける小沢氏のタフさには正直、驚きます。それが小沢神話につながっているのかもしれません。
鳥越 私も報道は常軌を逸していると感じました。
長谷川 秘密の捜査のはずなのにこれでもか、」と、毎日のように小沢批判記事」が出た。、明ちかにネタ元は検察です。マスコミがあそこまで情報を当局に依存することも異常だし、今となってみると、捜査報告書はデタラメ「西松建設からの違法献金は訴因からも外れ、陸山会事件では、どうでもいいような「期ズレ」が争点だっ」た。はっきりいえば検察がデッチ上げたような事件だったと思います。
鳥越 異様さの象徴といえるのが、ゼネコンへの一斉家宅捜索でした(10年1月)。
検祭は胆沢(いさわ)ダム建設で「天の声」があり、その見返りとして小沢兵にカネが渡ったというストーリーを描ぎ、大手ゼネヨンにも一斉捜索をかけた。テレビも新聞も、その様子を大きく報じたが、その後どうなったかの報道は一切ない。何も出ないまま立ち消えになりました。しかし国民には”大捜査を受ける小沢”というイメージだけが植えつけられて残る。
長谷川さんが指摘されたように、西松建設事件はおろか、微罪にすぎない陸山会事件ですら、検察は2回も不起訴決定をした。つまり何も犯罪行為は認められなかったわけです。それと国民が受けたイメージはあまりにも違う。
長谷川 検察審査会が小沢」氏を「起訴相当」と議決する根拠のひとつになった田代政弘・検事の「捜査報告書」は完全なデタラメ。特捜部長に宛てた副部長の報告書も佐久間達哉・前特捜部長が自分で書いていた、と報じられた。それに小川敏夫・前法相によれば、田代報告書にも文体に不統一な点があって、実は佐久間部長の手が入っていた可能性がある。こうなるともう検察による重大な犯罪です。本来なら大阪の郵便不正事件で証拠を捏造して実刑判決を受けた前田恒彦・元検事より罪刑が重ぐなる可能性がある行為です。
鳥越 そもそも検審に対して検察が説明すべきは、なぜ自分たちが不起訴にしたのかという理由でしょう。それなのに逆に「小沢はこんな悪い奴だ」と印象づける報告書を作った。これを検察の内部処分で済ますことは許されない。
官僚が警戒する「危険人物」
鳥越 検察が事件を作り上げたのは「小沢だから」という面があると思います。
93年に自民党を割った小沢氏は、わずか2日で新生党を結成して細川政権を立ち上げ、自民党を野党に転落させてしまった。そういう政治勘を恐れる者は少なくない。もし彼が権力の座に就けば、これまでいい加減なごとをしてきた検祭、司法にも手を突っ込んでくるかもしれない。そういう危機感から始まっているのかもしれません。
長谷川 同感ですが、少し違う点も指摘したい。ずばりいうと、小沢兵は「霞が関」の虎の尾を踏んだのではないか。そこには「暗黒捜査」を続けてきた法務・検察も含まれるでしょうが、本質的に小沢氏は霞か関にとって危険人物だった。
93年に上梓した『目本改造計画』は、今読んでも色あせないことが書いてある。まず官邸機能の強化や、政府と与党の一元化など、政策決定プロセスをがらりと変えようとしていた。さらに地域主権を主張し、地方分権基本法を提唱している。
鳥越 「官から政へ」という小択氏の理念はその傾から変わっていないし、民主党政権になってから事務次官会議を廃止するなど、一部はその方向で動いた。今はそういう政権の姿ではなくなってしまったが。
長谷川 官僚がそれを絶対に許さないからです。
これは堺屋太一さんに教えてもらった話ですが、彼は通産官僚として70年の大阪万博を推進した。それが省内から猛烈な反発を受け、省の部屋に閉じ込められたこともあった。なぜか。霞が関にとって、もっとも重要なのは東京一極集中であり、中央集権体制の維持だからです。60年代というのは、そうした官僚の悲願が成就された時代で、そのなかで「大阪万博」などもっての外だった、」と。
小沢氏は93年の時点で官僚システムを根本的に変えようと主張していた。霞が関にとっては前に立ちはだかった最初の力ある政治家だったのでしょう。小沢氏が「中央集権を壊す可能性がある脅威」と映ったのは間違いない。実は、霞が関には世間にはよく知られていない最高レベルの秘密会合もあるんですよ。
鳥越 それこそ事務次官会議でもあったし、官房長が横の連絡を取り合うたりすることもありますね。
長谷脚 それももちろん重要です。が、実は非公式の”最高会議”が別にある。それは財務省と法務・検察の首脳、それに官僚の最高ポストである事務担当の官房副長官が集まる会合です。財務・国税と法務・検察は事務次官をはじめ、さまざまなレベルで日常的に連絡を取り合っていて、人事の交流もある.
島越 それが事実とすれば、「この政治家は危ないから排除しよう」「あの政治家のスキャンダルを探しておいてくれ」といった官僚による政治支配の談合になる。
長谷川その結果かどうかはわかりませんが、私は3年前の政権交代直前から、鳩山政権は駄目だろうと思っていました。
なぜかというと、鳩山氏は09年の2月に「政権を取ったら霞が関の局長級はいったん全員、辞表を書いてもらう」といっていたのに、政権交代前の6月には辞表の件を撤回した。あれっ、と思ったら、ちょうどその頃、鳩山氏には「故人献金問題」(※1)」や母親からの「子ども手当(※2)」
などのスキャンダルが表沙汰になった。それで折れてしまったに違いありません。
小沢氏に対しては同じ頃に西松建設事件が起ぎ、霞が関はこれで脱官僚路線を止められると思ったでしょうが、こちらは不発に終わったわけです。
※1 故人献金問題/09年6月、旭山由紀夫・元首相の資金管理団体・友愛政経懇話会の政治資金収支報告書・(05~08年)に、既に亡くなっている人や実際に寄付していない人から個人献金があったかのように虚偽記載されていることが発覚。4年間で計193件、2177万円。
※2 子ども手当/①9年nE:鳩山元首相や弟の鵡山邦夫・元総務相が、実母から巨額の資金提供を受けていたことが判明.利息を払っておらず、贈与税逃れを指摘された。後日、鳩山元首相はそのうち12億4500万円を贈与財産として申告し、6億円の贈与税を支払った。
米国の虎の尾も踏んだ?
鳥越 これは直感的なものでしかないが、霞が関や法務・検祭に加え、「小沢間題」にはどうもアメリカが関わってるんじゃないかという気がしてならない。
戦後の日米関係は、歴代の自民党政権がそうであったように、アメリカのいいなりでした。毎年、アメリカから日本に「改革要望書」が突きつけられ、アメリカに都合のよいように日本の制度や法律がどんどん変えられていきました。例えば、アメリカの大手小売店が日本進出したいと思えば、「大規模小売店舗法を廃止せよ」と”要望”し、日本はそれを”お説ごもっとも”と聞き入れる。その結果、日本中にシャッター通りができた。
小沢氏は、自民党時代に厳しい日米交渉を経験している。官房副長官としては異例の政府特使になり、建設交渉、電気通信交渉でアメリカとガンガンやり合ったタフ・ネゴシエーター。アメリカは警戒すべき人物だと思ったことでしょう。
長谷川 そこは、どうでしょうか。さきほどの話と合わせていうなら、霞が関にとって日米基軸は絶対不可侵の話です。だからアメリカを怒らせる政治家は危険人物ですが、『日本改造計画』の頃の小沢氏ははっきりと日米基軸を主張しています。いつから日米中の「正三角形論」になったのかはよくわかりませんが、そうしたわかりにくい政治姿勢が不信感を招いたという見方はできます。
鳥越 小沢氏は今でも日米基軸でしょう。ただ、いいなりではなく、主張すべきは主張する点がこれまでの親米派と違う。期待感からそう思うのかもしれないが、普天間問題でもオスプレイの配備計画でも、もし「小沢総理」なら違う展開を見せたのではないですか。
長谷川 政治家としての小沢氏については、私は批判的です。著書や会見などでの主張は筋が通っているし、傾聴に値する点も多い。でもそれは表の話。裏では違う顔を見せることがある。
党と政府の一体化は従来からの主張で、鳩山政権では幹事長として政府の政策に深く関与した。例えばガソリン税の暫定税率廃止をひっくり返したのは当時、幹事長だった小沢氏でした。これはマニフェスト破りの第1号です。ところが、小沢氏はその決定について自らきちんと説明していない。著書では幹事長は入閣すぺきだと主張していて、そこはまだ実現していなかったというのかもしれませんが、それならそれで幹事長の自分が説明しなければならない。理念と実際の行動に差がある。
鳥越 細川政権で実験済みなのでしょう』あの時は、政権の主導権を握りたい新党さきがけの武村正義代表と角突き合わせる関係で、小沢氏は思うようにならないとすぐに雲隠れした。
国民福祉税も、本当は小沢氏と大蔵省の斎藤次郎・事務次官が諌り上げた政策で、細川総理の突然の発表が猛批判されて潰れたが、そういう黒幕のように動くやり方がマイナスイメージを招き、実際より巨大な悪役に見せている面はある。
長谷川 表できれいなことをいうのなら、政策決定のプロセスと結論はきちんと説明してもらいたい。斎藤元次官は鳩山政権発足直後に日本郵政の社長に就きましたが、これだって国民新党の亀井静香氏と小沢氏の差配とされている。この一発で官僚は大手をふって天下りできるようになってしまった。脱官僚路線はあれで壊れたといってもいい。
鳥越 「夫入の手紙」はどう見ますか? 私はあまりにも”うまくでぎてる”印象と、消費増税の採決直前という報じられたタイミングから、これは誰かが仕組んだなと感じました。
長谷川 心情の記述などはよく書けていて、これは本物かなと思わせる内容ではありましたね。
鳥越 その”小沢ならあるだろう〃という多くの人の気持ちに合わせて作られたストーリーであるところが怪しい。少なくとも、あのような私的な内容を、真偽の確認もないまま新聞までが報じることは疑問です。
やはり小沢兵は必要以上に恐れられているような気がしてなりません。
長谷川 簡単にいえば」「記者に嫌われている」ということでしょう。霞が関は本当に恐れているかもしれないが、例えばマスコミの人間はもっと単純に、ネタをくれない、仲の悪い記者はシカトする、気配りをしてくれない、というような理由で小沢氏を嫌っているんじゃないですか。
小沢氏の側近は議員も記者も切られてしまうと、切られた理由もわからず、電話にも出てもらえなくなるんだそうですね。「20回もメシを食ったが、1回しかおごってくれない。あいつはケチだ」、といった高名な評論家もいます(笑い)。
それに霞が関が嫌う人人間をよく書く記者がいないことも事実。新大臣の人物評などは、実は官僚がくれた話とか評価をそのまま書く。逆に官僚が「あいつは駄目」だ」といえば、そのまま悪口を書いたりする。
鳥越」それでも生き残るところも小沢兵の稀有な点。今回も小沢支持票ではないにしろ、57人もの民主党議員が造反に同調した。逆説的だが、特捜部に徹底的に狙われ、マスコミに叩かれ続けたことで、それでも潰されない小沢ってスゴイなという人もいる。、
長谷川 そこに殉教者のような雰囲気を感じる国民もいるでしょうね。
なぜ小沢氏が政治にこだわるか? それはもちろん、権力への欲望でしょう。それは別に否定も批判もしませんけど、あれくらいの「重要人物」はもっと国民の前で語ってもらわないといけないと思います。
鳥越 小沢氏はこれまでも総理大臣になろうと思えばなれた。それをせず、しかしここまで叩かれても政治に身を置き続けるのは、やはり日本に足りないもの、政治家として成し静げたいものが残っているからではないか。その志があることは、私は信じたい。
違法性はゼロ!”小沢疑惑&枇判や20年史プレイバック
●「東京佐川急便」疑惑 92年10月、経世会会長の金丸信・副総理が佐川急便からの5憶円闇献金で議員辞職。93年2月、小沢・前幹事長が衆院予算委員会に証人喚問された。メディアや野党議員は「具体的な証拠はないが貴任は重い」と追及。
●「細川政権で二重権力」批判 93年8月、細川政権誕生.自民党と新党さきがけの武村正義代表は、小沢・新生党代表幹事が裏で権力を握っているという「二重権力」批判を展開し、政権奪回のためだけに政策が真逆の自民党と社会党を連立させる「自社さ政権」を成立させた。
●「自由党資金を横領」疑惑 03年9月、自由党が民主党に合流する直前、党資金13億6816万円が政治資金団体「改革国民会議」に寄付された。それで「小沢党首が堂資金を横領した」と批報されたが、改革国民会議は小沢氏の関係団体ではない。小沢氏は裁判で、「同じ忠を持った同志のために使う。個人でその金に一銭も手を付けていない」と明言。使途ほすべて公開されている(政治塾の費用など)。10年末の残高は9億7409万円で、7年経つが10億円近い資金が残る。
●「政治資金で不動産購入」批判 06年5月、陸山会が不動産を購入していると報道。「政治資金で購入したのに小沢個人名義になっている」と批判された。しかし、それは政治団体が所有者として登記できないため。また「賃貸収入が目的だ」との批判には、小沢サイドは「収入は陸山会に入るので小沢個人の利殖はない」「本人の関連団体に賃貸しており、陸山会にも利殖目的はない」「無償で貸す方が問題」と反論した。その後、政治資金で不動産を購入しているのは小沢氏だけではなく、自民党の町村信孝氏らも購入していることが明らかに。
●「夫人が不動産購入」批判 08年9月、世田谷区深沢の白宅近くに、和子失人名義の土地建物(2棟)があり、秘書らが住んでいることが、”隠し資産”と報道された。ただ、未人は中堅ゼネコンの創業者一族。136万6000株を保有する大株主で、もともと多くの資産を持つている。
●「西松建設事件」疑惑 08年11月、東京地検特捜部が不正軽理(裏金)容疑で西松建設本社を家宅捜索し、「裏献金」(迂回献金]の疑惑に発展。西松建設は2つの政治団体を設立し、そごを通して小沢氏ほか、二階俊博氏、加藤紘一式、森喜朗氏、古賀誠氏、自見庄三郎氏など多数の与野党政治家が献金を受けていた。だが、09年3月、検察は小沢氏の秘書だけを政治資金規正法違反で逮捕。だが、政治団体として登録している団体が政治家に規定の範囲内で寄付を行なっているだけで法制度上、問題はない。
●「沖縄土地購入」批判 10年1月、小沢氏が所有する沖縄・宜野座村の土地5200㎡が「米軍普天間飛行場の移設予定地に近いので投機目的」と報じられた。しかし、キャンプシュワブ沿岸からは遠いので値上がりは見込めず、転売目的の可能管は低い。小沢氏は以前から「引退後は沖縄で釣リ三味の生活をしたい」と漏らしている。
●「迂回献金」擬感 11年11月.地元の党支部が10年に改革フォーラム21から1億円の献金を受け、1億円をそのまま陸山会に献金したことが「迂回献金」と取り沙汰された。だが、それは規正法が政治団体間の寄付を年間5000万円に制限しているから、上限のない政党支部を通しただけ。
●「隠し子」疑惑 12年4月、愛人と隠し子がいると報じられたが、当事者の知人の証言だけで、客観的証拠もなく、当事者たちも否定。
小沢の強力な、支持者いたさんヨリ。日本の巨大特権階級。壊滅セよ
小沢の強力な、支持者いたさんヨリ。日本の巨大特権階級。壊滅セよ