心にナイフをしのばせて-クロスオーバージャーナリズム

大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家、奥野修司による、「心にナイフをしのばせて(『酒鬼薔薇事件』に先立つこと28年前の類似の残虐事件)」を読んだら、壮絶な内容を体が消化するのに数日を要した。

自分なりの答えだが、人間は死んだら終わりではない・・・、生死を越えた観点から見る”霊性”のあり方が問われるのであり、そこに、こういった事件の救いがあるような気がするのだ。

もうすぐ7年目の3.11だが、奥野修司著「魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く」のような生死を越えたクロスオーバージャーナリズム(僕の造語です)がこれからますます必要とされるのではないだろうか。

*****************************著作紹介****************************
「今まで語れなかった――。でも、どうしても伝えたい」
そして、
〈誰にも書けなかった。でも、誰かが書かねばならなかった〉
〝不思議でかけがえのない物語″が、いま明らかになる!

あの未曾有の大震災から、今年で7年――。
その被災地で、死者を身近に感じる奇譚が語られているという。
最愛の家族や愛しい人を大津波でうしない、悲哀の中で生きる人びとの日常に、 突然起きた不思議な体験の数々……。
《愛する亡夫との〝再会″で、遺された妻に語られた思いは……。
津波で逝った愛娘が、母や祖母のもとに帰ってきた日に……。
死んだ兄から携帯電話にメールが届いて……。
早逝した三歳の息子が現れ、ママに微笑んで……≫
だが、〝霊体験″としか、表現できないこうした〝不思議でかけがえのない体験″によって、絶望にまみれた人びとの心は救われたのだった――。
著者は3年半以上も、そのひとつひとつを丹念に何度も何度も聞き続け、検証し、選び出し、記録してきた。
「今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい」という遺族たちの思いが噴き出した、初めての〝告白″を、大宅賞作家が優しい視線と柔らかな筆致で描き出す!
唯一無二の〝奇跡″と〝再生″の物語を紡ぎ出す、感動と感涙のノンフィクション。

小説「夜の歌」衆議院選挙にて、圧倒的な与党の勝利に捧ぐ

突然の急死に臨んだ場合、自分の一生を走馬灯のように一瞬のうちに隅々まで再体験することがあるという。
人智学で有名なシュタイナーによれば(正確には、シュタイナーの評伝、タイトルなどは忘れた)、死後、人間は自分の一生を振り返るだけではなく、自分に相対した相手の感情を再体験することになるという。例えば、自分が侮蔑した相手の侮蔑された感情を再体験したり、自分が助けた相手の安堵した感情を再体験をするというのだ。つまり、人は、生死を通じて、あざなえる縄のごとく運・不運を統合するということらしい。

実は、ここ一週間ほど、なかにし礼の小説「夜の歌」を読んでいた。ゲーテの”ファウスト”をなぞったようなキャラクター、”ゴースト”が顕われて、なかにし礼と一緒に彼の人生を、過去にさかのぼり詳細に読み解いていくという話だ。

話の中核は、戦後の満州からの引き上げ時のエピソードと、昭和歌謡の一時代を築いた人気作詞家の生活で、後半に、彼のお金を巻き上げ続けたお兄さんも登場する。

満州引き上げ時の壮絶なエピソードは、類を見ないほど凄惨である。また、なかにし礼の作詞したヒット曲(昭和のヒット曲と言うべきか)に絡んだエピソードは、実に面白い。

引き上げ時には、7歳ほどだったという礼が、当時の詳細な記述を成し遂げているのは、丹念な資料収集などがあったのだろうが、彼の臨死体験が大きな影響を与えているのではないかと思う。自殺した父、親子を陰ながら助ける諜報員、母と姉の描写は、彼が彼らの感情を経験したとしか言いようがない表現となっている。

小説の序盤の、ゴーストと礼の対話を若干紹介しておこう。

「君はこないだ私に連れられて最高塔に上った。そこで君は”死臭”をかぎ、自分自身には封印していたはずの、少年期にわが目で見た戦争という暴力の残酷さに再び出会った。それは、君にとっては二度目の絶望だったかもしれないけれど、その絶望が君という人間の土台を造り上げていることを思い出したはずでしょ?」
「うん。その通りだ。だけど、二度とあの光景は見たくない」
「なぜ?」
「あの絶望を封印したことで、僕は今日まで何とか生きることができたんだもの」
「永遠に封印したいってこと?」
「うん、もちろんさ。あんな絶望は二度と願い下げさ」
「そうはいかないわ。あの光景をもう一度はっきりとその目で見て、確認して、もう一度絶望に打ちひしがれなくては、本当の君の全人格は完成しないの。それをしないかぎり、君はいつまでたっても、土台のない、つまり足のない幽霊みたいな存在でしかないのよ。そんな幽霊が、歌が書きたいなんて笑わさないでよ。・・・」

壮絶な再体験を重ねていく礼に、小説半ば過ぎにゴーストは次のように諭す。

「・・・真珠採りの海女は深く潜れば潜るほど大きな真珠を取ることができるわ。でも、あまりに深く潜りすぎると海面に帰り着く前に息が途絶えて死ぬことだってあるのよ。君の記憶探索作業もそれと同じで、あまりに深く潜りすぎると危険な場合がある。人間の記憶世界は何層にも分かれていて、第一層、第二層、第三層、第四層・・・・実際に何層に分かれているのかは誰も知らない。とにかく意識にも深淵があるように、記憶にも深淵があるとされている。第一層があれば日常生活に不自由しない。第二層があれば大抵の試験に合格できる。第三層があれば芸術家になれる。その芸術家の中でも、本来の自己そのものと直面して、それをしかと感得して、世に稀なる作品を創造したいと思うものは、第四層、第五層、いやもっと深く記憶の深淵にまで潜り込んでいかなくてはならない。記憶世界は深い。闇よりも深い。それが第何層に当たるのかはわからないけれど、母の胎内にいる時の記憶をくぐり抜け、いつしか民族の、いや人類の記憶とさえ合体するところにまで潜りゆく芸術家だって時にはいるのよ。たとえばゲーテなんかはそうよ。こんなことを言っているんだからさすがだわ。『全人類に課せられたものを、私は自分のうちにある自我でもって味わおう。自分の精神でもって最高最深のものを敢えて積みかさね、こうして自分の自我を全人類にまで拡大し・・・』(『ファウスト』)。余計なおしゃべりをしてしまったけれど、レイ君、君も相当深いところまで潜っていたことは確かよ。でも、今回はここまで」

昼間に星は見えないが、星が無くなったのではない。太陽の光が遮られれば、星は煌々と光り輝くことになる。瞑想とか、臨死状態で、人の意識が遮られると、そこで体にうごめく記憶が饒舌に語りかけてくることになる。真に死に至るためには、そのうごめく記憶と対峙しおのれを完了しなければならないようだ。

小説の終章「ニルバーナ」にて、著者は死の淵で7歳のおのれと対面し、「よみがえりなき死は真の死にあらず」ということを了解するに至る。
人を蹴落とすことは、蹴落とされることであり。人を愛することこそ、人から愛されることでもあるわけだ。人が、実に、心から人を敬い、人を助けることは、涅槃への近道であるようだ。

今回の衆議院選挙、与党の圧倒的勝利に、この小説をささげようと思う。

“Good intentions don’t work” アマゾンCEO ジェフ・ベゾス氏の言葉より

週刊東洋経済、今週号のアマゾン特集記事で「Good intentions don’t work」というフレーズに初めて触れた。面白い。

アマゾン、ジェフ・ペゾス(Jeff Bezos)CEOのメッセージだという。「人間の”意志”が仕事をしない」とすると、何が仕事をするのか。それは、”メカニズム”だという。
では、仕事とはいったい何なのかと考え始めてしまうところだが、それこそがintentionsであり、仕事をしないことになっちゃうわけだ。はっきり言って、完敗です。これ以上は、何も言えません。

ちなみに、特集記事では日本企業はおしなべて完敗状態らしい。

とはいえ、仕事にはいろいろあって、おそらくは、今の流通業近辺が、このメッセージの働くところなのだろうとは思うのだが、はてさて。

ちなみに、グーグル検索で、日本語のコメントなどはまだありませんでした。

水木しげるを読んでいる

現在、就寝前に読む本は「ゲゲゲの人生 わが道を行く」水木しげる著だ。先日、ブックオフで見つけたものだ。NHK番組「ゲゲゲの女房」放映時に関連して出版されたようなので、戦争と奥さんの話(対談も)が多い、マンガ入りのエッセィというところかな。

戦争中の不思議な話がたくさんあって面白い。人間の極限状態に、不思議なことは多発するようだ。そういったこともあり、マンガ作品「全員玉砕せよ!」に興味をもった。直接的には、エッセイの次の箇所に触発されたのだが。

水木サン語録コーナー *描かされた「全員玉砕せよ!」*

あれはね、全く不思議なんですよ。描かされたって感じ。
出来上がるまでは何か無我夢中でね、出来上がってから、「あっ・・・・」てな感じですよ。
誰が描かせたのかねぇ。やっぱり、あの島で死んだ連中だろうねえ。
やっぱり死ぬときは無念で残念だからねえ。
彼らが描かせたってのは、間違いないかもわからん。
だいたい戦争ってのは無理なんじゃないですか。
二十歳とか二十一歳くらいの青年を殺すってことは、やっぱり無理なんですよ。
アメリカだろうと日本だろうと、不自然なことなんです。
私はそう思いますよ。
だから、「戦争はしない方がいい」というのは、自然の声だと思いますよ。

“描かされたって”どういうことなのか、確かめたくなりますよね。で、格安中古本を探したのですが、なかったので、残念。週明けに通販注文することにしました。お陰様と言おうか、ネット徘徊中に動画サイトに「鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争~ 」を見つけてしまいました。これは、DVDがプレミアム価格をつけていて、入手難の商品なんですね。NHKで放送された作品なのですが、評判もよかった作品とのことです。

ということで、動画、ご紹介します。

https://www.youtube.com/watch?v=uuXsd5J7sY4

サンデー毎日 2017.4.30 「小学校を待望していたのは安倍首相だ!”籠池長男佳茂氏独占インタビュー」

今週のサンデー毎日はおもしろかったな。

なかなか粒ぞろいの記事にあふれていましたが、やはり一番は”小学校を待望していたのは安倍首相だ!”籠池長男佳茂氏独占インタビューでしょうか。インサイダーならではの描写はリアリティがありますからね。