遍在転生観-渡辺恒夫

先に紹介した彼岸の時間―“意識”の人類学で、心理学者の渡辺恒夫氏の遍在転生観(輪廻転生を考える―死生学のかなたへ)を知りました。興味深い説なので、ここで紹介します。
・・・なぜ我々は、他人の痛みを想像できるのだろうか。
それは、すべての他者が、多かれ少なかれ「私」の「生まれ変わり」だからだ、と考えてみてはどうだろうか、と渡辺は提案する。「生まれ変わり」というのは、時間をおいて出現する「コピー人間」なのだから、同時に存在する人たちが「生まれ変わり」だというのはおかしい。しかし渡辺は,物理学者R・ファインマンの、反粒子は時間を逆行していると見なせる、というモデルを引き合いに出し、時間というものが一次元的に逆戻りせずに流れると考えるのではなく、二次元的な時間平面の上をまがりくねりながら流れている、と想定すれば問題は解決する、という。二次元的な平面の上をジグザグに進む点は、一次元の軸に投影すると、いったり来たりしているように見えることもある。そして、自分の「生まれ変わり」たちが同時に存在しうることになる、というか、すべての他者は自分の「生まれ変わり」なのである。このような、拡張された転生観を、渡辺は、「遍在転生観」と呼ぶ。
「〈私〉は、時間の第二次元軸上を無限に転変を重ねる宇宙唯一の自己意識である。宇宙に生きとし生けるあらゆる人間、あらゆる自己意識的生命個体は、この唯一の〈私〉の、時間の第一次元軸上への投影にほかならない」。これは、真の自我(アートマン)はブラフマン(宇宙意識)にほかならないというウパニシャッドの理論ときわめてよく似た結論である。

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