チェニジア政変が示唆するもの

チェニジア政変が示唆するものは大きいと思う。

まずは日本経済新聞の社説から”何がチェニジア政変を導いた”をご紹介。

何がチュニジア政変を導いた
2011/1/18付

アラブ諸国の中では政治情勢が比較的安定しているとみられた北アフリカのチュニジアで政変が起き、1987年から続いてきたベンアリ政権があっけなく崩壊した。経済成長の一方で民主化の遅れはアラブ諸国に共通している。今回の政変の背景にある構造的な問題を再認識し、他の国々の政治情勢の変化にも注意深く目を向ける必要がある。

90年に1600ドル程度だったチュニジアの1人あたり国内総生産(GDP)は、昨年4100ドル強まで増えたと国際通貨基金(IMF)は推計している。欧州連合(EU)などとの自由貿易の枠組みも進み、直接投資の流入も増えた。チュニジアは経済政策の面で“優等生”とみなされた国の一つだった。
一方で先週末に国外に亡命したベンアリ前大統領は、国内メディアを統制して事実上の終身大統領制を復活させ、取り巻きによる汚職も指摘されていた。独裁大統領の下でテクノクラートが経済改革を進め、成長軌道に乗せているが、所得水準の上昇につれ民主化要求が噴き出しやすい状況にもなりつつあった。
最も深刻な問題は、人口が急増する中での若年層の高率の失業だ。大学を出ても職が容易に見つからない不満に、最近の食料価格急騰への怒りが重なり、政変につながった。
米国の追加金融緩和政策も一因となっている国際商品相場の高騰が、発展途上国の政治・社会情勢に大きな影響を及ぼし始めていることも、見逃せないポイントであろう。
チュニジアでは、フェースブックなど新しい情報伝達手段を用いて多くの国民が治安警察の動きなどの情報を共有し、反政府デモが一気に広がったという。
情報通信革命を追い風に独裁政権を倒し民主化への道を開く――。この国を象徴する花になぞらえ「ジャスミン革命」と呼ばれ始めた政変は、同様な問題を抱える他の国々の政権への重要な警告になる。
新たに発足する政権は、混乱長期化や過激派の台頭を防ぎつつ民主化を着実に進めるべきだ。他のアラブ諸国でも反政府デモが広がる兆しがあり、情勢流動化への警戒も必要だが、広範な政治改革の契機になるならジャスミン革命の意味は大きい。

上の社説に沿って箇条書きに重要と思われるものを拾ってみよう

1.国内メディア統制が、意味をなくし始めた

2.若年層の高率の失業

3.食料価格急騰

4.フェースブックなど新しい情報伝達手段を用いて多くの国民が治安警察の動きなどの情報を共有し、反政府デモが一気に広がった。

上の4点は、しかし、どこの国家でも同様の現象でもあるので、チェニジア政変に続く政変が出て来ることは十分に予想される。

日本に上記の4点を当てはめてみると、1は確かにそうでしょう。2もそうなのだが、少子化によって若年層の総体人口がチェニジアに比べると弱そうだ。食料価格急騰は、円急騰に相殺されて、切実な問題とはなっていない。4は1と関連があるが、情報伝達手段は電話からはじまって順当に進化しているわけで、チェニジアが経験した急激なものにはほどとおい状況と思われる。

そうはいっても、実際に民主党が政権を自民党からもぎ取ったわけだから、激動の世界の一端は担っていると言えるかもしれない。

日本に関係のある国家でいうと、中国、北朝鮮などに上記4点を当てはめてみると・・・、何らかの激変が生ずるのは時間の問題だなあと思うのだが、どうだろうか。

ウィキリークスが本当に暴き出すもの #2

今日の日本経済新聞にでたウィキリークス関連の記事だ。

ウィキリークス攻防激化 各国が包囲網、民間も呼応
サイト側は移転や増設で対抗
2010/12/7 2:14
大量の米外交公電を公表した告発サイト「ウィキリークス」に対する包囲網が強まってきた。米国では同サイトへのサーバーの貸し出しを取りやめたり、寄付金口座を閉鎖するなどの動きが相次ぎ、大規模なサイバー攻撃も発生した。一方、同サイトの支持者らは同じ内容を掲載した別サイトを続々立ち上げている。告発サイトの是非を巡る議論が尽くされる前に、その存亡をかけた情報戦が激しさを増している。
ウィキリークスが米国の外交公電の一部を公開したのは11月28日。その直前から、サイトに対する大規模なサイバー攻撃が始まった。多数のコンピューターを動かし標的のサイトに一斉にアクセスする「DoS」と呼ばれる攻撃で、一部のネット利用者はサイトの閲覧が一時できない状態になった。当初は愛国主義的な米ハッカーが中心だったようだが、その後、参加者が内外に広がった。
内部告発サイト「ウィキリークス」を巡る主な動き
2006年
オーストラリア国籍のアサンジ氏が「ウィキリークス」を設立
2009年
多国籍企業がコートジボワールで有毒物質を不法投棄したとする内部資料を公表
2010年4月
米軍によるイラク民間人の誤射殺害映像を公開
7月
アフガニスタンでの米軍事作戦に関する機密文書7万点以上を公表
10月
イラク戦争関連の米軍機密文書約40万点を公開
11月
米国の在外公館が送った外交公電約25万通を入手し一部を公開
国際刑事警察機構(ICPO)が性犯罪の容疑でアサンジ氏を国際指名手配
12月
米アマゾンがウィキリークスへのサーバー貸し出しを中止したことが判明
米電子決済サービス会社、ペイパルがウィキリークスへの寄付金口座を閉鎖
■公式サイトはスイスへ
ネット上の「住所」を管理する米国内の企業は、他の顧客のサイトが影響を受けるのを避けるため、ウィキリークスの住所管理を中止。公式サイトはスイスへの“引っ越し”を余儀なくされた。
米政府は「世界の安全保障への攻撃」(クリントン国務長官)、「深刻な犯罪」(ホルダー司法長官)と非難。流出源やウィキリークス関係者を対象に捜査を始めた。
政府の非難に呼応するように米アマゾン・ドット・コムは、ウィキリークスに対するサーバー機能の貸し出しサービスを中止した。サーバーはサイトの運営に不可欠な高性能コンピューター。アマゾンは「顧客は自分の所有権が明確なデータのみ貸しサーバーに預けることができる」と、利用規約に違反している可能性を理由に挙げている。
さらに、同サイトへの寄付金口座を運営していたネット送金サービスの米ペイパルも、利用規約違反を理由に口座を凍結した。欧州や豪州でもアサンジ氏を罪に問う動きが広がっている。
■数百の複製サイト?
ウィキリークスはスイスとアイスランドを本拠地とする企業の口座に寄付金管理場所を移したもよう。サイトのネット上の住所もスイスだけでなく複数の欧州国に分散している。米政府はスイス政府に対し、同サイトや創設者のジュリアン・アサンジ氏は犯罪者だとしてサイト運営や資金管理上の保護をしないよう要請しているもようだ。
だがサイバー攻撃後、世界中のウィキリークス支持者はサイトの内容をそっくりそのまま見られるミラー(鏡)サイトを新規に立ち上げた。その数は数百に上るもよう。不正などを暴くためネット上の匿名性を重視するグループは、ウィキリークスを攻撃する政府や企業に対するサイバー攻撃を呼びかけている。
上記掲載の冒頭部分に”当初は愛国主義的な米ハッカーが中心だったようだが、その後、参加者が内外に広がった。”との記述があるが、ここに日本経済新聞の思慮が働いている。実際には最初からアメリカの攻撃であるのは明白だ。このように情報というのは編集されてしまうのである。”愛国主義的な米ハッカー”もまんざらいないわけでもないだろうが、閲覧を長時間不可能にするほどの力はない。こういった、微妙な、嘘ではない嘘が巧妙に記事の中に紛れ込まさせられるのが「編集」である。嘘ではない嘘で塗り固められた嘘で情報操作がされている。
いずれにせよ、現在サイバー空間では、息もつかせぬ攻防がくり広げられているわけで、また、元々創設者のジュリアン・アサンジ氏がハッカー出身ということもあり、幾多の人が、色々な意味でこの戦いに注意しているわけである。ある意味、未来を決める戦いにもなっているかもしれない。ちょっと前に、中国政府(もしくは要人、とはなっているが、これは素直に中国政府だろう)がGoogleにサイバー攻撃を仕掛けたという記事があったが、権力というのは同じような反応をするということが判る。
ウィキリークスの本拠地が、核攻撃に具えたシェルターの中にあるということだが、当初は大げさだなと思っていたのだが、今は、”意外にそれなりの構えだったんだ”という感想になってしまった。
日本に関する機密が6000ぐらいあるとのことだが、どんな反応が見られるのか、ある意味、楽しみな今日この頃ではあります。

ウィキリークスが本当に暴き出すもの

ウィキリークス(WIKILEAKS)が話題だ。何カ所かのドメインをあたってみたが、なかなかつながらないので(下記、サイバーテロによるものらしいとのことが判りました)、IPアドレスでリンクを貼って置きました。

ウィキリークス、サイバー攻撃殺到で一時閲覧不能に2010/12/4付 【ロンドン=共同】米軍情報や米外交公電を独自入手し公開してきた内部告発サイト「ウィキリークス」が3日、一時閲覧できない状態となった。日本時間の同日正午ごろから閲覧不能となったが、午後7時前、別のドメインネーム(インターネット上の住所)で閲覧が可能になった。AP通信などによると、閲覧できなくなったのは、同サイトにサイバー攻撃が殺到し、ドメイン「wikileaks.org」を管理している米エブリィDNS社がサービス停止に踏み切ったため。

当ブログでは先日の尖閣諸島流出ビデオの記事ですでにウィキリークスについて言及していますが、ますます、その意を強くしているところです。すなわち、流出しない機密などはなくなるのです。たとい、ウィキリークスが妨害でなくなったとしても、代わりのサイトがすぐに登場してくるでしょう。時代は後戻りできないのです。

ウィキリークスが中立的ではないとか客観的ではないということがよく言われますが、逆に中立的とか客観的な情報はありえるのでしょうか。実は、ここが問題なのです。いままでは、数社の新聞社、テレビ局、ラジオ局が流通情報を加工して大衆に提供してきました。すなわち情報操作が公然と行われてきたのです。しかしながら、インターネット情報はこの操作の網をくぐり抜けることができます。ウィキリークスが中立的か、客観的かはとりあえずは置いておくとしても、少なくともアメリカや日本の国家の統制は免れている情報源であるということは言えます。つまり、情報は、かなり活きがいいのです。いまのところ、一般大衆に害をあたえる情報もでてきていないようです。

さて、尖閣諸島流出と、警察資料の流出で、日本が国家として信用されなくなると懸念した向きがあり、マスコミの論調はおしなべてそうでしたが、その時点ですでにアメリカ機密の流出が明らかになっていたので、いまとなっては的はずれな議論にさえなってしまいました。いつの時代にもしたり顔で良識を語る人はいますが、このような的はずれな方は実に多い。

今日、日曜日にサンデーモーニングを観ていましたが、いつものコメンテーター面々のコメントは実に良識的でがっかりしました。あたらずさわらずというか、事態の重要性がわからないというか、いつものようにはするどく反応できていませんでした。しかし、岸井さんは意外にまともで、見直しましたね。マスコミ出身なので、ことの本質がわかっているのかもしれませんね。

ウィキリークに関する議論はこれからも盛んになっていくと思われますが、誰がどのような意見を述べるのか、しっかり聴いておきましょう。ウィキリークが本当に暴き出すのは、そういった方々の真実だと思います。個人に限らず、たとえば、ペイパル、アマゾンなども反応しています。

米ペイパル、ウィキリークスの決済口座閉鎖

機密暴露で「規約に違反」

2010/12/5 18:33

【シリコンバレー=岡田信行】電子決済サービス大手の米ペイパルが内部告発サイト「ウィキリークス」の寄付金集めに使われていた決済口座を4日までに閉鎖したことが明らかになった。米政府の機密公電などとされる文書が大量に流出した問題で「規約に違反した」として無期限に利用を制限する。ウィキリークスの資金集めに打撃となりそうだ。

口座閉鎖はペイパルが自社ブログに投稿し、明らかにした。同社は「(ウィキリークスが)違法行為を実行、助長、指示するような活動での利用を禁ずる規約に違反したため、無期限に利用を制限する」としている。

ウィキリークスを巡っては、米アマゾン・ドット・コムが同様の理由で、同サイトへのサーバー貸し出し(ホスティング)を中止している。欧米当局が同サイト追及の動きを強めるなか、告発の舞台となってきたIT(情報技術)大手の各種サービスからも締め出されることになった。

ネット上ではどこからでも情報発信でき、ウィキリークスはアマゾンのサーバーを使わなくても情報発信が可能。一方、ペイパルの口座閉鎖は資金集めに影響が出る可能性がある。

尖閣沖中国漁船衝突ビデオby sengoku38

sengoku38、通称仙石サンバビデオによる尖閣沖中国漁船衝突ビデオ全6巻はすでにユーチューブより削除されています。しばらくは拡散&保存用のビデオがアップ去れ続けるものと思われます。予想以上に臨場感のあるビデオで、現場の緊迫感が伝わってきたな。ドキュメンタリーの力は偉大だ。

折しも、昨夜7時半よりNHKテレビ、クローズアップ現代でウィキリークの特集をしておりました。かなり衝撃的な内容で記憶に残ったところに翌日が、この流出ビデオ騒ぎです。

情報管理、危機管理がずさんだという議論もあるが、クローズアップ現代を見る限り、アメリカ国防省関連の機密情報が大量にリークされている現状などを勘案しても、的はずれな議論とも言える。もはや、流出しない機密などあり得ないと考えるのがいいのかもしれないな。言い換えれば、流出してまずい機密などいらないのではないか。

話は代わりますが、インターネット上では、先日は民主党の小沢氏が既存のメディアではない、インターネット動画にて生出演するということがあり、メディアを騒がせています。

インターネットが、日常になるにつれ、いままでの大量生産、大量販売を軸とした新聞、テレビ、ラジオの既存メディアが力をなくし始めている象徴的な事件といえるのかもしれません。

「由らしむ可し、知らしむ可からず」が当たり前の権力(マスコミも含む)が瓦解しはじめています。社会が不安定になっていくものと思われますが、落ち着いて冷静に見守っていきましょう。

9・11の標的をつくった男  天才と差別―建築家ミノル・ヤマサキの生涯

9・11の標的をつくった男  天才と差別―建築家ミノル・ヤマサキの生涯は、9.11の標的ワールドトレーディングセンターを建築した日系アメリカ人の詳細なドキュメンタリーです。なかなかの大作でページ数も多いので熟読はできず、流し読みで終わらせました。本のタイトルが良いですね。

まさにアメリカを体現したドキュメンタリーになっていると思います。アメリカのどこを切っても、おなじような内容になるのではないでしょうか。ミノル・ヤマサキの建築スタイル、作品で中東との関連性を披露されています。若干の意味合いを持たせていますが、ミノル・ヤマサキと中東との関連が特に深いというふうに取るよりは、アメリカと中東との関連が深いというに解釈すべきだと思います。そういった意味で、ミノル・ヤマサキは現在のアメリカをそのまま体現したといえるのではないでしょうか。

エピローグにての著者の次の文章が心に残ります。

9・11が再びめぐって来る。現場では、例年のように犠牲者たちを悼む追悼式が行われる。しかし、そこには、ミノルが情熱を捧げたWTCの面影はない。貿易を通じて弱小国にもフェアに世界平和をもたらそうという目的でミノルが建て、しかしその目的とは裏腹に、弱小国を搾取して利益を吸い上げる大企業の富とグローバリズムの象徴になったWTCは、もうなかった。

あれから、でっち上げの疑惑で湾岸戦争をおこし、石油や資源を高騰化させ、詐欺まがいの金融政策でリーマンショックをおこし、いまや、ドルの垂れ流しで世界をドル漬けにしながら、それでも暴利をむさぼり続けるアメリカ。正義と公平さの主張の向こうには、常に強者のみの世界観が横たわる国。すべての富を奪い取るということはどういう事なのだろうか、壮大なパワーゲームのいく末をいま世界が経験させられようとしているのだ。