午前に引き続き、午後も先ほど郵便局に行ってきた。
お盆だけど、休みではない郵便局。客もいなくて、僕の貸し切り状態が続いている。職員は、所長代理一人と女性が二人。所在無げな彼らの視線の先に僕がいるわけだ。いつもお世話になっているお返し、しなくちゃね。
「お盆でもあることだし、どうでしょ、不思議な体験を話し合いましょうか。」
女性陣がえ~と言葉を返す。彼女らにはそんな体験は無いという。僕にもそんな体験は無い。
そんな三人の視線は、残された所長代理に向かうと、自信ありげな所長代理がいつもよりゆっくりと満を持したかのように話を始めたではありませんか。
所長代理が25歳ぐらいのころ(20年ぐらい前)、福島から新潟に向けて深夜に車を走らせていた。曲がりくねった山道に入ってふと気が付くと助手席の前のフロングラスに手形のようなものがついている。
あれ?と気が付いて不思議だなと思い始めたところ、車がトンネルに入ったり、橋を渡ったりする都度に手形が増えていくではありませんか。
恐怖の中で、所長代理はひたすら車のハンドルを握り続けたのであります。
明け方に新潟についてから見つけたガソリンスタンドに立ち寄り、そのころにはもう窓ガラスいっぱいに付いてしまった手形を拭いてもらうように声を絞るように頼んだそうです。手形は、内側からつけられたもので、容易に拭き去ることはできなくて、スタンドマン達も往生したそうです。
・・・ということで、思いもしないお盆の話が、あらかたの輪郭を顕わして、質疑応答に入り始めたころには、局内は活気に満ちてきたようでした。
新しいお客も入ってきたのを機会に、さよならを言って、郵便局を後にしたのでした。